


内閣府の試算によると、TPPに参加すれば、品目、分野によりプラス・マイナスはあるものの、全体では2.4兆円から3.2兆円の経済効果が期待できるんだって。
自由貿易で輸出が増えるのに加え、国内産業の生産性もアップして、大きな経済効果が出てくれば、雇用も増えるんじゃないかな。



経済効果2.4兆円から3.2兆円という試算の根拠はほとんど発表されていません。 内閣府の試算を担当した川崎研一氏(野村証券金融経済研究所 主席研究員) によれば、この数字は自由化を続けて10年間の累積とのこと※、1年では経済効果もGDPの0.1%程度ということになります。
(※出典 週刊東洋経済 2011年3月12日号)
仮に輸出が増えたとしても、雇用や給与が良くなるという保証はありません。 実際、過去20年ほど日本の輸出額は大きく伸びたのに、一人あたりの給与は下がる一方。 輸出企業の利益は、内部留保や株主配当、海外投資に向けられ、雇用や給与には反映されません。


給与が下がる中で、生活用品や食品などで安い輸入品が豊富に出回るのは、消費者の利益になる気がするわ。
でも、実はそれがさらに生活を圧迫する原因になると言う話も聞くし…どっちが正しいのかしら?


景気が良く、インフレ傾向にある国に、安価な輸入品が増えると、それは消費者利益になり、購買意欲も刺激されます。
しかし現在の日本は、物価が安く、賃金も低いというデフレの状態です。 安価な輸入品の増加により、さらにデフレが進行すれば、今以上に厳しい価格競争の結果、労働者の賃金はさらに低下し、失業率も増える心配があります。 このようにTPPは景気回復どころか、デフレ不況の悪化をもたらすのです。



TPP参加国は原則的に同じ貿易ルールが適用されます。 それであれば、日本は早めに参加表明し、日本からの輸出に有利になるよう積極的にルール作りに参加するべきじゃない?


「TPPが将来のアジア太平洋の通商統合に向けた基盤である。もし、
当初のTPP交渉8カ国でゴールド・スタンダード(絶対標準)に合意できれば、日本、韓国その他の国を押しつぶすことができる
。それが長期的な目標だ」
「米国との自由貿易協定は長年の目標ではあったが、広く一般に信じられているように国内産業にとってエルドラド(理想郷)となることはあり得ない」
出典:日本農業新聞記事より抜粋
日本の恒常的な対米貿易黒字解消を求め、米国は繰り返しさまざまな要求を出してきました。 そのつど、日米は相互の事情を鑑みながら、丁寧に交渉してきました。
しかし、TPPは全加盟国共通ルールが原則ですから、他の参加国が承認したルールに日本だけが異議を唱えるわけにはいきません。 1年以上も前から始まっている交渉で、もし日本がTPPに参加しても発言できる余地は無く、TPP参加国が求める要求を丸のみさせられる心配があります。 それは交渉参加国であるニュージーランドのTPP主席交渉官の発言からも明らかです。


野田首相も、「医療制度、日本の美しい農村漁村、日本の伝統文化、守り抜いていきたいと思います。守るべきは守る、勝ち取るべきは勝ち取る」と発言しています。TPP交渉に参加すれば、大事なものは守りながら、日本に有利なように交渉を進めることができるんじゃないの?


現在交渉に参加している9カ国は、
①交渉参加国が既に合意した事項はそのまま受け入れる
②交渉参加国で設定した野心の水準(自由化の目標)を下げない
③交渉を遅らせない
の3つの条件に合意しています。(出典:2011/11/25 Inside US Trade)
また、2012年3月15日に、米国のTPP主席交渉官のウィーゼル氏は、「(「カナダ、日本、メキシコの3か国は最終合意前の交渉への参加が認められるのか?」という質問に対し、日本、カナダ、メキシコが)進展中の交渉に参加することは許されないだろう。また、これら3か国がテキストを提案することも、変更することも、自らの見解をテキストに反映させることも非常に難しい問題であり、認められないであろう。」と発言しています。
つまり、交渉参加国の間で合意済みの事項については、日本に不利なものであっても文句は言えないし、守るべきものを自由化の対象外にしようとしても、「それは自由化の目標を下げることになる」といわれてしまいます。
既に決まった部分については、日本はルール作りには参加できないし、守るべきものも守れないのです 。


日本の工業製品は海外との競争を通じて、品質向上とコスト削減を達成し、強い市場競争力を身につけてきたわ。 農業だって、生産の集約化やコストダウンで体質改善すべきよね。
TPP参加がそのきっかけになるなら良いことじゃないかしら ?



日本の国土の7割は農地集約化などの規模拡大が難しい中山間地です。 また、農家1戸あたりの平均農地で比較すると、アメリカは日本の104倍、オーストラリアは1,591倍にもなります。 農地の規模など生産条件の違いを見れば、日本が米国やオーストラリアと同じ条件で競争するのは困難なことが判ります。
こうした国土条件などの違いで生まれる国産品と輸入品の格差を調整するのが関税です。 関税はWTO加盟国の間で共通の計算方法で海外の物品との内外価格差に基づき設定されるもので、農産物を保護するために、日本が意図的に高くしているわけではありません。


「GDP構成比1.5%の第一次産業を守るために、残りの98.5%が犠牲になっている。」と主張する政治家もいるわよ。
TPP参加で農業などの第一次産業に大打撃を受けたとしても、海外から食料を輸入すれば良いのでは?



世界の人口増加や、紛争、地球温暖化などで、世界的に食料危機への不安が高まっています。 中東・北アフリカの反政府デモのきっかけも、ひとつにはウクライナやウクライナから輸入されている小麦価格の高騰でした。
世界中で農地や水の奪い合いが始まっている今、主要国首脳の発言にあるように、他国で何が起きても、自国で安定的に食料を供給できる能力はとても大切なのです。
また、世界には栄養不足の人が9億人以上います。 日本は海外の貴重な食糧を買いあさるのではなく、できる限り国内での生産を高める努力をすべきではないでしょうか。
自国の食料を短絡的に輸入に頼るのはとても危険です。


近年、お隣の韓国は多くの国と積極的にFTA交渉を進めているわ。 それに比べると日本の動きは遅く、このままでは世界的経済発展のバスに乗り遅れるという意見も出ているようね。
今TPPに参加しないと日本の競争力は大きく低下するというネガティブな理由で、TPPへの参加に賛成する人もいるようです。


韓国はシンガポール、EUなどに続き米国とも批准手続きを進めるなど、FTAに積極的です。 同国内にも反対論はあるものの、その戦略は揺るがないように見えます。
しかしそれで日本が国際ビジネスに遅れを取ったと考えるのは早計です。
韓国の輸出比率は54.8%。 輸出を拡大させなければ、国の運営が成り立ちません。 他方、日本の輸出比率は17.4%。 日本経済を牽引するのは内需なのです。一部国内産業が失われても輸出を拡大しなくてはならない韓国と、震災もあり内需拡大が最重要課題の日本では、取るべき道は自ずから異なります。


TPPに参加するということは、世界第一の経済大国であるアメリカとの貿易が増えるってことよね。それに今後の経済成長が期待されているアジアの国にも参加するということからみても、当然、日本の輸出は伸びるはずよね。


TPP参加9カ国に日本を加えたGDPをみると、日米で全体の90%以上を占めてしまいます。また日米以外は輸出依存度が高い国ばかりです。そうなると、日本からの輸出増が期待できるのは、やはりアメリカです。
ところが、そのアメリカは停滞する経済や、失業問題、そして財政赤字に苦しんでて、その打開策が大幅な輸出拡大なのです。
今でも日本からの輸入超過是正のため、より多くの対日輸出を目指しています。
また、日本から米国への輸出の3割を占める乗用車の関税は2.5%。この撤廃で日本から輸出が大きく増えるでしょうか?それに、為替リスクやエネルギー、低賃金で働ける労働力確保などのために、多くの製造業が現地生産化をすすめています。
こうしたことから、TPPで増えるのは日本の輸出ではなく、米国からの輸入になります。


それでも、「TPPに入って関税がなくなれば、輸出が伸びて、国全体が豊かになる」という主張を良く伺います。 本当にそうなのでしょうか?


確かに関税撤廃は輸出環境を改善します。しかし日本の輸出ターゲットは、TPP参加国のGDP全体の7割を占める米国。その米国へ輸出しているのは主に自動車等の工業品です。実は、米国の工業品に対する関税はすでに軒並み低率で、撤廃されても恩恵は少ないのです。
さらに自動車でいえば、現地生産・現地販売が多く、関税があってもなくても、大差がないのではないでしょうか。


米韓FTAの具体的な内容はあまり報道されていないわよね。
韓国では、米国への自動車などの輸出が増えると期待する人がいる一方、反対デモも起きているってニュースでも流れているわ。
ホントのところはどうなの?


韓国では米韓FTAにより輸出の伸びが期待されている一方、大きな弊害を懸念する国民も多いのです。
例えば、韓国はFTAの交渉中「医療部門の開放はない」と断言してきましたが、協定には特区内での保険適用除外規定が盛り込まれました。さらに、韓国が公的保険を強化する政策をとった場合、米国保険会社は「民間保険市場の縮小を招く」という理由で損害賠償を求めることが可能になりました。FTAで韓国の国民皆保険は崩され始めたのです。
また、米国の自動車を韓国で売り易くするために、排出ガス診断装置装着義務や安全基準認証など一定の規制を緩和することとなりました。
韓国は、国民の健康や安全などを守る基準を自国だけで決められなくなったのです。


テレビや新聞で言われている通り、とりあえず一度交渉に参加してみて、日本に不利ならやめれば良い気もするわ。
バイトだって、求人広告にいろいろ書いてあるけど、実際始めてみないとわからないじゃない?


TPPは国際交渉であり、一般的に交渉参加後の途中離脱は、物理的には可能でも、政治的には非常に困難です。
交渉参加は婚約、TPP協定の発効は結婚のようなものです。 TPP交渉への参加(=婚約)は基本的にTPP自体に参加すること(=結婚)が前提となります。 婚約前なら別れても大きな問題にはなりませんが、婚約解消となると後々問題になりかねません。 TPP交渉にひとたび参加したら、後戻りはとても困難なのです。
交渉の途中で「自国に利益が無いから」という身勝手な理由で離脱したら、日本の国際的な信頼は大きく損なわれることでしょう。


長く続く日本の景気低迷への刺激策としてTPPの必要性を訴える声があるよね。 今の日本を鎖国時代になぞらえて、TPPで「平成の開国」が必要だって言う人もいるけれど、本当なのかなぁ。


そもそも、鎖国にたとえることが間違い。たとえば、米国から日本に輸入される自動車の関税はゼロ。 日本の全品目の平均輸入関税はアメリカ、韓国よりも低く、農産物に限ってもEUや韓国よりも低く設定されています。 関税率から見れば、日本すでに十分開かれている訳です。
では、なぜアメリカが日本のTPP参加に期待するのでしょうか。 それはTPPにより、日本の社会や価値観に基づく規制、慣行や規格などを撤廃し、米国企業が米国内と同様に日本でもビジネスができるようにしたいからです。 生活、安全、文化を守るためのルールを自国で決められなくなるとしたら大問題です。